マドリードの3大美術館といえば
1にプラド美術館。スペイン美術の芸術作品コレクション。
2にソフィア王妃芸術センター。現代アートの芸術作品コレクション。
3がティッセン=ボルネミッサ美術館。ヨーロッパ芸術作品レクション。
つまり、マドリードで3大美術館を制覇!?すれば、西洋美術の流れがつかめる。
実際に行った感想、行き方や入場料、無料開放日などもあわせて載せていきます。
枯木の聖母 Madonna of the Dry Tree 1460頃
ペトルス・クリストゥス (Petrus Christus, 1410/1420-1475/1476)。は初期フランドル派のオランダの画家で、ヤン・ファン・エイクの弟子にして後継ぎ。
樹木はエデンの園の知識の木の象徴、木にかかる黄金の「A」の文字は「アヴェ・マリア」の祈りをあらわす。
漆黒をバックに幽玄の世界を描き、ドラマティック。
ヘンリー8世の肖像 Henry VIII of England 1536頃
ハンス・ホルバイン(Hans Holbein 1497/1498-1543)。ルネサンス期のドイツの画家。
豪壮でありながら威厳がりますね。あの。『ヘンリー8世と6人の妻』その人。
ルーブル美術館に『エラスムスの肖像 Erasmus』(1523)
ロンドン・ナショナルギャラリーに『大使たち The Ambassadors』(1533)
がある。
ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像 Portrait of Giovanna Tornabuoni 1488
ドメニコ・ギルランダイオ(Domenico Ghirlandaio 1449-1494)。ルネサンス期のイタリアの画家。 ミケランジェロの最初の師匠。
ジョヴァンナ・トルナブオーニはメディチ家の母方の名家に18才で嫁いだお姫様。2人目を身ごもるものの、20才をまたず、この世を去った。昔、出産は命をかけた大事業だった。ウエストまわりで妊娠中であることがわかりますね。高貴な女性にふさわしい豪華な衣装。この絵はジョヴァンナの死後に完成した。
ティッセン・ボルネミッサ所蔵のルネッサンス絵画の珠玉の1枚つであり、ティッセン男爵のお気に入りの1枚。
さわやかな風がさっと吹き抜けていったかのような。すがすがしい美しい絵。
受胎告知 The Annunciation 1576頃
エル・グレコ(El Greco 1541-1614)ギリシア生まれ、名声を築いたのはスペイン。
スペインに行くからには、プラド美術館の『三位一体 Trinidad』(1577-1579頃) をはじめとする名画たち、ティッセン・ボルネミッサ美術館の『受胎告知』、トレド大聖堂の『オルガス伯の埋葬 The Burial of the Count of Orgaz』(1586–1588)、全部見るべき!
聖女カシルダ Saint Casilda 1630-1635頃
フランシスコ・デ・スルバラン(Francisco de Zurbarán 1598-1664)。スペイン絵画黄金時代、17世紀前半のスペインの画家。
聖女カシルダは9世紀のムーア人の王女さま。父の王にそむき、密かにキリスト教に帰依する。
手にするパンとばらの花がカシルダのしるし。
父が捕虜にしたキリスト教徒たちにパンを運び、父に「何を持っているのか」と彼女に尋ね、王女は「ばらの花です。」と答えると、ドレスに隠したパンはばらの花に変わった…。とのエピソードに基づきます。
聖母子とビテルボの聖女ロサ The Virgin and Child with Saint Rose of Viterbo 1670
バルトロメ・エステバン・ペレス・ムリーリョ(Bartolomé Esteban Perez Murillo 1617-1682)。17世紀のスペイン黄金時代の画家。
聖女ロサは13世紀、ローマ近くの小さな町、ヴィテルボに生まれ、キリスト教に傾倒し、棄教しようとした人の目の前で盲人の目を見開かせ、燃えたつ炎の中に入り、立ち止まっても、服は燃えず、やけどもなかった。わずか17才で神のそばに召され、ヴィテルボでは毎年、聖女ロサのお祭りが開かれています。
やわらかな、和ませる親しみやすい愛らしさ・美しさがムリーリョの持ち味。
受胎告知 The Annunciation Diptych 1433-1435頃
恋焦がれるヤン・ファン・エイクの珠玉の1枚。
ヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck 1395頃-1441)。フランドル絵画の巨匠。
彫刻ではなく絵です。さすがの超絶技巧。つまり「絵なのか彫刻なのかわからない」ほど、描写力が緻密・精緻で真に迫っている。モノトーンの抑えた色遣いが純真無垢なマリア様をより一層引き立てている。
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」
「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」
(と額縁に書いてある)
昔のことですから、マリアさまは15~6才くらい。
マリアさまのつんと伸びた形の良い鼻。清純そのもののお顔、表情、一瞬の仕草、たたずまい。
分厚い衣装のひだの1つ1つまでもが、リアルすぎる。そして魅力的すぎる。
500年前、依頼主は、この絵をみて、びっくり仰天したことでしょう。
ファン・エイクのほかの代表作は
ロンドン ナショナル・ギャラリーの『アルノルフィーニ夫妻像 The Arnolfini Portrait』(1434)
ベルギーのヘントのシント・バーフ大聖堂『ヘントの祭壇画 Ghent Altarpiece』(1432) など。
アレクサンドリアの聖カタリナ Saint Catherine 1595-1596頃
カラヴァッジョ(Caravaggio 1571-1610)。ルネサンスに続くバロック期を象徴するイタリア人画家。
日本でのカラヴァッジョ展も大人気だし、マドリードに行ったなら見て帰らねばもったいないわ。聖カタリナは清楚な知的美人、一途に信仰を貫き通す激しさと純粋さをあわせ持つ。光と影のコントラストのカラヴァッジョが清純派の美女を描いている。壊れた車輪(車輪に手足をくくりつけられて転がされるという拷問を受けたが、カタリナが車輪に触れると車輪は壊れてしまったとのエピソードに基づく)と剣が聖カタリナの象徴。
乗馬服の婦人 Horsewoman, Fullface 1882頃
エドゥアール・マネ(Édouard Manet 1832-1883)。フランス印象派の画家。
長袖できっちり手袋をして襟の高い服を着ているけど、季節は夏なのでそうで。絵画としては未完成。画家の死後に公開された。
マネの代表作は
パリ・オルセー美術館の『草上の昼食 Le Déjeuner sur l'herbe』(1862-1863)、『オランピア Olympia』(1863)、
ロンドン、コートールド・ギャラリーの『フォリー・ベルジェールのバー Un bar aux Folies Bergère』(1882)など。
庭で日傘を持つ女 Woman with a Parasol in a Garden 1875
ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir 1841-1919)。生きる喜び、人生の美しさを描きつくしたフランス印象派の画家。
逆光で日傘をさす女性と子どもを描いた印象派の絵はルノワールじゃなくてモネで、絵はワシントンのナショナルギャラリーにあります。
ルノワールの代表作は パリ、オルセー博物館の『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会 Bal du moulin de la Galette』(1877)、 スイス・チューリッヒのビュールレ・コレクション『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の肖像 Irene Khan Dan Vale Miss Portrait』(1880)など。
緑の服の踊り子 The Green Dancer 1879)
エドガー・ドガ(Edgar Degas 1834-1917)は、フランスの印象派の画家・彫刻家。
ドガは芸術的なキャリアの多くをバレエに捧げ、パリ・オペラ座の踊り子(バレリーナ)を描いた絵が代表作。ドガにとってはダンスは人間の姿を研究するための理想的な手段。この絵では桟敷席、上から舞台を見つめ、オレンジ色の衣装を着たバックダンサーは待機し、中央のバレリーナがターンを決めた瞬間が描かれている、瞬間をパステルでとらえる臨場感・高揚感。構図には日本の浮世絵の影響が見て取れる。
オーヴェルの庭 Les Vessenots in Auvers 1890
フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh 1853-1890)。説明無用の炎の画家。
ゴッホ最晩年の作品。死の直前の数週間、ゴッホは常に外にいて風景画を描きまくった。陽光てりつける肥沃な緑の農地の広大な広がりはゴッホの魂を開放し、同時に、結果的には彼の自殺へと続く憂鬱と絶望と孤独を決定づけたとも言える。
アルルの沖給仕 The Stevedores in Arles 1888
もう1枚、ゴッホ。
夕暮れ時の水辺。私たちが見慣れたいつものゴッホの色遣い、点描法と、少し違う。この画像だと平坦に見える色も、間近でみたら、鮮やかな絵の具の色と盛り上がりとタッチが、はっきりわかるはず。
ワーレルロー橋 Waterloo Bridge 1906
アンドレ・ドラン(Andre Derain 1880-1954)。フォーヴィスム運動に指導的役割を果たしたのフランスの画家。
ビクトリア堤防から見たウォータールー橋。ターナーとモネによって描かれてきたたテムズ河岸をフォービズム技法で描いた。 橋の水平線(明るい青で塗られている)は、構図の地平線として機能します。 点描技法でかつ明度の高い色が使われており、濃い青、明るい黄色、緑、青、紫の色の爆発がフォービズムの表現。陰鬱な!? ロンドンの景色は、見る人と描く人が変わればこう変わるのです。
鏡を見るアルルカン Harlequin with a Mirror 1923
パブロ・ピカソ(Pablo Picasso 1881-1973)。20世紀最大の画家にしてキュビズムの巨匠。スペイン生まれ。
アルルカンとは、イタリア喜劇に出てくる道化師。やさ男の若い道化が、髪を直し、鏡にうつる自分の姿を見つめる。なにやら妖しい。
ピカソは作品数がとにかく多い。青の時代、ばら色の時代、アフリカ彫刻の時代、キュビズムの時代、新古典時代、シュールレアリスムの時代と次々と表現方法を変えていく。『鏡を見るアルルカン』は。キュビズムを経て新古典主義時代に入ったピカソの代表作。
目を覚ます1秒前、ザクロの回りのミツバチのばたつきによって見た夢 Dream Caused by the Flight of a Bee around a Pomegranate a Second before Waking 1944
サルバドール・ダリ(Salvador Dalí 1904-1989)。スペインが産んだシュールレアリスムの巨匠。
裸婦はダリの妻でありミューズであるガラ。 ガラの眠っている姿は、静かな海の中の岩の上に浮かんでいる。 裸体の横に、2滴の水、ザクロ、蜂が浮遊している。 ガラの夢は、蜂のうなりによって促され、爆発するザクロから魚が飛び出し、その口から2匹の凶暴なトラが銃剣とともに現れ、1秒後にガラを眠りから目覚めるのです。
風景の中の若い騎士 Young Knight in a Landscape 1505頃
ヴィットーレ・カルパッチョ(Vittore Carpaccio 1465頃-1525頃)。イタリアのヴェネツィア派の画家。
カルパッチョ…。といえば魚料理では、とか思っちゃう。画家のカルパッチョの大好物が、そのまま料理の名前になりました。ただし、本家本元のカルパッチョのお好みは、お魚ではなく、牛肉。
ヨーロッパの全身肖像画の最も初期の例の1つ。 騎士のよろいはピカピカ!
細密に描きこまれた動物や植物や静物、背後の騎士や風景は寓意に満ちている。
空中でタカに捕らえられたサギは、この騎士の戦いでの死を暗示。槍を持つ騎士は、彼の生涯の1シーンともとれる。左下隅の白テン。巻物には「不名誉を被るよりも死ぬことを選ぶ」との文字。
ティッセン・ボルネミッサ美術館を代表する名画であり、実際の絵は大きい。 218.5cm x 151.5cm。ミステリアスでありながら抒情的。絵の前には人だかりができていました。
引き潮、トルビルの小屋 The Hut in Trouville, Low Tide 1881
クロード・モネ(Claude Monet 1840-1926)は、印象派を代表するフランスの画家。
1881年8月の終わりにトルビルに一時滞在した時に描いた絵。
海辺に照り付ける日の光と遠くにかすむたくさんの帆影、水平線と海の境目の表現。
マタ・ムア(昔々) Mata Mua (In Olden Times) 1892
ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin 1848-1903)。印象派から次第に距離を置き、タヒチに渡った孤高のフランス人画家。
山に囲まれた牧歌的な風景の中、月の女神ヒナを崇拝する女性たちが描かれている。手前では、少女がフルートを演奏し。 背の高い木の幹で区切られた向こうでは像のまわりで女性たちが踊る。ゴーギャンは1891年にタヒチ島に出発した。西洋文明の外にインスピレーションを求めたものの、目にしたのはすでに消えゆく運命にある過去の名残だけだった。この絵はゴーギャンが熱望していた人間古来の生き方、いにしえの時へのゴーギャンの賛美歌。失われた黄金時代への挽歌。
ゴーギャンは2回目のタヒチ旅行のためにこの絵を売ろうとしたものの、買い手はいなかった。
座った男 Seated Man 1905-1906
ポール・セザンヌ(Paul Cézanne 1839-1906)。キュビズムをはじめとする20世紀の美術に多大な影響を与えた「近代美術の父」。
セザンヌの庭師、ヴァリエは、画家の新しいスタジオのテラスの近くの手すりに座ってポーズをとります。 プロヴァンスの農民の無地の青い作業服に身を包み、強さと堅実さを伝え、黄土色の欄干の強い横のラインが絵を引き締めている。物事の内部構造を捉えようとするセザンヌの探求において、形と色が不可分になるにつれて、初期の穏やかで正式な取り決めは崩壊し始める。
Hotel Room 1931
エドワード・ホッパー(Edward Hopper 1882-1967)。20世紀アメリカの具象絵画を代表する画家の一人。
現代社会と孤独における孤立は、ホッパーの絵に繰り返されるテーマ。 この絵では、女性がホテルの部屋のベッドの端に座っている。 夜。彼女は疲れてる。 彼女は帽子、ドレス、靴を脱ぐ。そして、かばんも開けず翌日の電車の時間をチェックしている。 空間は前景の壁と右側のチェストで制限され、その一方、ベッドの長い対角線は、視線を背景に向けさせる。開いている窓は、みる者が部屋で何が起こっているかを覗き見ているかのよう。憂鬱な女性とシーンを照らす人工光とシンプルで無機質な部屋と対照的。
鏡の中のジョージ・ダイアーの肖像 Portrait of George Dyer in a Mirror 1968
フランシス・ベーコン(Francis Bacon 1909-1992)。アイルランド生まれのイギリス人画家。現代美術に多大な影響を与えた20世紀後半の最も重要な画家の一人。
偉大な芸術家であることは間違いないものの、破滅型。画家としてのキャリアは30代半ばから。絵は大胆不敵で荒々しく過激で、実生活もしかり。自分の作品を片っ端から破く・捨てる…癖があり、名声の割には現存する作品が少ない。
長年連れ添ったベーコンの恋人であるジョージ・ダイアー(当然LGBT)が、スタンドのある奇妙な家具に置かれた鏡に面した回転椅子に座り、 歪んだ体と鏡に映る痙攣したねじれた顔が描かれ、スポットライトを浴びている。鏡に映る顔は2つに割られ、死の願いと欲望を組み合わせた表現。ベーコンは人間の最も不愉快な側面を捉えている。
赤い娼婦のいる街路 Calle con buscona de rojo 1914-1925頃
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー(Ernst Ludwig Kirchner 1880-1938)は、20世紀のドイツ表現主義の画家。
ドイツ実存主義とは、前衛芸術のさきがけとなった、1920年にベルリンに花開いた絵画、武道、映画などの総合芸術運動。キルヒナーは時代の空気に魅了され時代の寵児となるものの、兵役につき、心を病み、肺結核にかかり、ナチスドイツに自分の作品を否定され、ピストル自殺をとげた。
ピンクのセーターを着たクアッピ Quappi in Pink Jumper 1932-1934
マックス・ベックマン(Max Beckmann 1884-1950)。ドイツの画家。
"クアッピ"は歌手でもありバイオリニストでもあった奥様マチルデ(Mathilde Beckmann 1904-1986)の愛称。1930年代当時のベルリンは、世界の最先端を行くモダンでアートな都市だった。奥様のお召しのドレスも、当然、流行の最先端のファッション。夫妻はナチスドイツの迫害を受け、アメリカに亡命した。
描かれているのは意志の強い女性。当時の最先端、インフルエンサー。
浴室の女性 Woman in Bath 1963
ロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein 1923-1997)はアメリカのポップアートの画家。 大家。
青、黄、赤の基本色が使われ、女性の手と顔は、白い背景に対して太い黒い線で輪郭が描かれており、背後のタイル張りの壁の静的な並びと対照的。
ヴィーナスとキューピッド Venus and Cupid 1606-1611頃
ピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens 1577-1640)。フランドル絵画の最も傑出した大家。『フランダースの犬』でネロが見たくて見たくてたまらなかったのが、ルーベンスの絵。
スペイン王室のコレクションにティツィアーノ(Tiziano Vecellio 1488~1490頃-1576)の『ヴィーナスとキューピッド』があり、この絵はルーベンスの書いたティツィアーノのコピーの1つ。 ルーベンスの絵のみどころは、繊細なタッチと絶妙の色彩表現。
サザーランド公爵夫人ミリセント Portrait of Millicent, Duchess of Sutherland 1904
ジョン・シンガー・サージェント(John Singer Sargent 1856-1925)。アメリカの画家。イギリスとフランスの上流階級の人々の優美な肖像画で名高い。
サザーランド公爵夫人ミリセント(Millicent Sutherland-Leveson-Gower, The Duchess of Sutherland 1867 –1955)はロンドンの社交界の花形。
伯爵令嬢として生まれ、17才で結婚、サザーランド公爵夫人となり、子どもは4人。夫に先立たれたあと、2回結婚している。
第一次大戦時は野戦病院を指揮、長くフランスに住み、第二次世界大戦後、いったんはアメリカに亡命したものの、戦後はまたフランスに戻り、フランスで生涯を終えたった。死後は火葬され、墓はサザーランド家のお城の墓地に埋葬された。
美人は何人も見せていただいたので、イケメン、いってみます。
イエスとサマリアの女 Jesus and the Samaritan Woman at the Well 1640-1641頃
グエルチーノ(Guercino 1591-1666)。バロック期のイタリアの画家。
キリストさまがサマリア人の女に水を飲ませてくれと頼み、女は目の前の男が救世主であることに気づく。キリストさまはなおも「私の与える水はその人の心の中で泉となり、永遠の命に至る水がわきあがるであろう。」 と語りかける。
聖セバスティアヌス Portrait of a young Man as Saint Sebastian 1533
アーニョロ・ブロンズィーノ(Agnolo Bronzino 1503-1572)。マニエリスム期のイタリアの画家で、メディチ家づきの宮廷画家。
聖セバスティアヌスは3世紀の殉教者。ローマの親衛隊の隊長さん(つまり男性美あふるるキャラ)で、キリスト教の囚人をかばい、救い、あまたの奇跡をおこすものの、皇帝の怒りにふれ、矢を射られて殺されてしまう。
若い男の肖像 Portrait of a Young Man 1518-1519頃
ラファエロ・サンティ(Raffaello Santi 1483-1520)工房。ラファエロはルネサンス期の画家。
ラファエロ(工房を含む)の真筆か否かについて研究が重ねられてきた。この絵はメディチ家にゆかりの男性の肖像と考えられ、現在はメディチ家最後の当首、27才の若さで暗殺されたアレッサンドロ・デ・メディチ(Alessandro de' Medici 1510-1537)ではないか、との説が有力。
まだ少年の面影を残した肖像画。
フロアマップとおすすめの回り方
効率よく見学するためには、まずエレベーターで2階(日本式の3階)へ直行。2階、1階、地上階の順に回ると、中世から現代まで年代を追って鑑賞できる。
2階 Planta Segunda
1 | イタリアプリミティブ |
2 | 15世紀ドイツ絵画とスペイン絵画 |
3 | オランダプリミティブ |
4 | 15世紀イタリア美術 |
5 | ルネッサンス肖像画 |
6 | ビリャエルモサ宮殿 |
7 | 16世紀イタリア絵画 |
8・9 | 15~16世紀ドイツ絵画 |
10 | 16世紀オランダ絵画 |
11 | ティツィアーノ ティントレット バッサーノ エル・グレコ |
12 | カラヴァッジョとバロック |
13~15 | 17世紀イタリア、フランス、スペイン絵画 |
16~18 | 18世紀イタリア絵画 |
19 | 17世紀フランドル絵画 |
20 | 17世紀フランドル絵画とオランダ絵画 イタリア風傾向 |
21 | 17世紀オランダ絵画 肖像画 |
A | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 17世紀イタリア絵画 |
B | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 17世紀フランドル絵画とオランダ絵画 |
C | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 18世紀~19世紀風景画のギャラリー |
D | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 17世紀絵画 |
E・F | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 19世紀北アメリカ絵画 |
G | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 19世紀ヨーロッパ絵画 自然主義派 |
H | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 19世紀ヨーロッパ絵画 印象派 |
1階 Planta Primera
22~26 | 17世紀オランダ絵画 日常の風景、室内と風景 |
27 | 17世紀静物画 |
28 | 18世紀フランス絵画とイギリス絵画 |
29・30 | 19世紀北アメリカ絵画 |
31 | 19世紀ヨーロッパ絵画 ロマン主義、自然主義派、写実派 |
32・33 | 19世紀ヨーロッパ絵画 印象派、後期印象派 |
34~38 | 20世紀前半ヨーロッパ絵画 表現主義 |
39・40 | 戦時中の写実主義 |
I | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 休憩エリア |
J | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 19世紀の北アメリカ絵画 印象派 |
K~M | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 19世紀ヨーロッパ絵画 印象派・印象派後 |
N・O | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 20世紀前半ヨーロッパ絵画 表現主義 |
P | カルメン・ティッセン・ボルネミッサ・コレクション 初期アバンギャルド |
地上階Planta Baja
41・42 | 20世紀前半ヨーロッパ絵画 キュビズムとその軌跡 |
43 | 抽象画のパイオニアたち |
44 | ダダとシュールレアリズム |
45 | シュールレアリスムと新たな規範 |
46 |
20世紀北アメリカ絵画 中小表現主義とその環境 |
47 | 戦後ヨーロッパ抽象画とフィグラティブ |
48 | ネオダダイズムとポップアート |
概要
スイス人の美術収集家ティッセン・ボルミネッサ男爵親子2代にわたる秀逸コレクション。 プラド美術館に近い立地の良さ。公爵様のタウンハウス(19世紀の新古典様式)を美術館に改装(スペインを代表する建築家が指揮をとった)する展示スペースの良さが功を奏し、マドリードが誘致。後にスペイン国家が買い取り、し一般公開。西洋美術の個人のコレクションとしては質、量ともに世界レベルで激推し、超一級。
住所・行き方
(入口)
Paseo del Prado 8 28014 MADRID
※2番線バンコ・デ・エスパーニャ駅(Banco de España)から徒歩5~8分
プラド美術館、ソフィア王妃芸術センターから徒歩圏内。プラド美術館、ソフィア王妃芸術センターのように大きな前庭に面している訳ではないので、美術館の規模は外観を見ただけでは実感しにくいけど中は広大。
電話番号
917911370
開館時間
月曜日 12:00~16:00
火曜日から日曜日 10:00~19:00
入場料
(チケット)
13ユーロ
※プラド美術館、ソフィア王妃芸術センター、ティッセンボルネミッサ美術館に入場できる「パセオデルアルテカード」は29ユーロ60セント。
私は当日、カウンターでチケット購入。待ちなしでした。
※月曜日:無料(12時から16時まで)
日本語パンフレット
入口入ってすぐのインフォメーションセンターにあります。
日本語オーディオガイド
あり(5ユーロ)
デポジットがわりに、クレジットカードを預けました。 絵を見終わり、同じカウンターに返却すれば、クレジットカードは戻ってくる。
休館日
1月1日、5月1日、12月25日
写真撮影
可能 フラッシュ禁止
手荷物検査
なし
公式サイト
チケットやオーディオガイド、カフェはオンラインで予約・購入できます。
Museo Thyssen, gestión integral de venta de entradas
ミュージアムショップ
実際に行ってみた感想
込み具合は、プラドを10とするなら、 ソフィア、ティッセン・ボルネミッサは入り口2、中はゲルニカ6、他は2~3。
開館が新しく(1992年)、プラドで『ラス・メニーナス』ソフィアで『ゲルニカ』との超々ビッグ・ネームがあるので集客力では劣るのかもしれないが、見応えはマドリード3大美術館で随一だった。
絵が好き、美術館めぐりが好きな人ならば絶対に行っておくべき美術館。
普通、芸術に限らず、コレクションは膨大になればなるほど、クオリティにばらつきが大きくなる。
NYのメトロポリタン美術館なんかも、通常の展示ブースと一緒に、所蔵庫に毛が生えたような、作品が折り重なって置いてあるような展示ブースがあった。
1枚1枚、展示してある絵とモノが違うのが素人の私にもよくわかった。
ティッセン・ボルネミッサは 例えば印象派なら印象派、フランドルならフランドル、ルネサンス以前ならルネサンス以前…とブースが仕切られ、各ブースに10枚前後の絵が展示してある。
10枚が10枚とも、
- ものすごく状態が良く
- 「この絵、いったい何? この絵描いた人、いったい誰?」
とのイマジネーションをかきたてられる絵ばっかり。
がブースを移るたびに繰りかえされる…。
系統だった展示の立て方が見事で、展示されている作品も見事だ。作品が先なのか、組み立てが先なのか。
個人のコレクションが、一般客を唸らせるものすごい厚みを持つ。
イギリス・エリザベス女王に次ぐ世界第2位の個人コレクションなんだそうです。上流階級の富と知識と人とのつながりと長い年月。すべてケタ違いだったんだろうなあ。男爵さまのお人柄と美しいものを愛する気持ちに思わず頭を垂れ、居住まいをただしたくなり、そして、うらやましいな。私も、生まれ変わったら、そんな人生、送れたらどんなにいいだろう…、と憧れてしまう。コレクションは、銀河系みたいに、アンドロメダ星雲みたいに、きらめいてました。
圧倒されたことでした。
マドリードにいらした時には、ぜひ。
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