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ソフィア王妃芸術センターでゲルニカ ピカソとダリとミロ 実物を見て初めて実感

マドリードに行ったなら、『ラス・メニーナス』と『ゲルニカ』くらいは見て帰りたい。
『ラス・メニーナス』はプラド美術館にある。
『ゲルニカ』はソフィア王妃芸術センターにある。行かなくては。

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

 

 

 

ソフィア王妃芸術センターの特徴

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

現代美術に的を絞っての展示。現代美術といえば、難しすぎて画家が何を描いているのかがわからない。で、結局、何を言いたいんでしょうか、がわからないイメージがある。

『ゲルニカ』は20世紀を代表する名画の1枚だし、奈良の大仏と同じで、絵があるだけで、人は来る。

そしてピカソがスペイン人なら、同じく20世紀のシュールレアリズムの巨匠、口ヒゲのアイデンティティーだけで誰なのかがわかるサルバドール・ダリもスペイン人。

よく知らないけど絵を見れば、多分見たことがあって、名前も言われてみれば思い出せるミロ、もスペイン人。

『モナ・リザ』『ミロのヴィーナス』『ゲルニカ』どまりの一般大衆相手に ネームバリューがあり、時代が比較的新しいスペイン人大画家の代表作を常設展示している。

そして「現代美術」「フォービズム」「キュビズム」だって、作品数は多いし、裾野は広い。

不案内な入場者にもわかりやすく、親しみやすく、興味を持ってもらえるよう。

「『現代美術』って聞いただけで敬遠してたけど、案外、アリかも」との感想を持ち帰ってもらえるよう。

工夫された美術館。それがソフィア王妃芸術センター。

 

 

概要

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

アクセス

地下鉄1号線 Estación del Arte芸術駅から徒歩3分

住所

C/ Santa Isabel 52, 28012, Madrid. TEL/FAX, (91)7741000 / (91)7741056

開館時間

10~21時

日曜は~19時
※日曜の13時30分~19時は一部のみ見学可

休館日

火曜

入場料

10ユーロ
月・水~土曜の19時~と、日曜の13時30分~は無料。

ほかに年5日無料入場日があり、公式サイトで確認できる。

※入場無料になる日は15分前くらいから行列ができ始める。特にハイシーズンは込み合うので早めに到着を。
オンライン購入の場合8ユーロ+手数料。

 

こちらから ↓ 予約できます
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鑑賞アドバイス

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

私が行った時は9月の日曜日の午前中、プラド美術館ほどは混んでいなかった。チケット売り場の行列はせいぜい5~6人。

(安くチケット買いたいなら当日売りが一番。でも行った時、混んでいて時間のロスが大きい時もあるし。難しいですね)

日本語のオーディオガイドはない。美術館の方には「すみません」と日本語で謝られてしまった。

写真撮影は、『ゲルニカ』とその周辺の部屋は禁止。残りの部屋は写真撮影可。ただしフラッシュ撮影や三脚使用は不可。

常設展示のみを見学する場合は、1~2時間あれば鑑賞できる。企画展もあわせて観るなら最低でも3時間は必要。

シエスタの時間にあたる14~16時が比較的空いている。会館前に到着しておき朝一番に入場するのも手。
月曜はまわりの美術館がすべて休館しているので、ほかの曜日より混むことが多い。

入り口は、サバティーニ館(ガラス張りエレベーター側)に1ヶ所、新館に1ヶ所。2カ所。

正面入口で、金属探知機と荷物のX線検査のセキュリティチェックあり。リュックなどの大きな荷物やナイフ類は持ち込み不可。

サバティーニ館入口を入って左側と、新館チケット売り場の裏、新館入り口の先にコインロッカーがある。
0.5ユーロと1ユーロのコインしか使えない。両替機あり。コインは戻ってくる。

 

 

主な部屋のテーマ・リスト

20190908

201 近代(進歩とデカダン派の流行)
202ー205 潜在意識の革命:シュルレアリズム
206 1930年代(近代前衛は)/戦争:詩と記憶
207・210 近代的視線の発見:キュビズムへ
417 スペイン絵画の開発主義

※展示が画家別ではなくテーマ別なので、作品を探しにくい。配置換えもある。貸出中などで見られない作品があることも。お目当ての作品が見つからない時は館内のスタッフに聞くしかない。

 

 

おすすめ見どころ作品

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

  • レイナ・ソフィア三大巨匠

ピカソ・ダリ・ミロの作品が同じフロア(2階)にある。三大巨匠の名作はマスト!

 

  • スペイン内線以前の作品

2階の展示は19世紀末から20世紀はじめに活躍した作家たちの作品。マドリード出身でイラストレーターから画家となった、ファン・グリスなどが有名。キュビズムの影響を色濃く受けた作品が多い。

 

  • 戦後~現代の作品

4階にはスペイン内線から現代までの作品を芸術運動別に展示。絵画のほか、オブジェや映像、光のアートもある。新作を定期的に入れ替えながら展示しており、最新アート事情に接することができる。

 

  • その他

20世紀の現代美術の巨匠のひとりといわれる、アントニ・タピエスの作品も充実。一歩進んだ抽象芸術。また、サバティーニ館入り口を入って左に進むと、企画展を行う展示室がある。新館でもさまざまな企画展が行われている。新館には図書館も併設。ただし観光客は入場不可。

 

ピカソ

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

マラガ出身。幼いころから類まれなる才能を発揮し、数多くの作品を残した。父ホセも画家であったが、幼いピカソのあまりの才能に画家を辞めてしまった。頻繁に作風が変わったことでも知られており、「青の時代」や「ゲルニカの時代」など、それぞれの時期に名称が付けられている。絵画、陶芸、彫刻とさまざまな分野に秀でた天才アーティスト。キュビズムを生み出し、90歳近くまで多くの作品を作り出した。生涯で2人の妻と複数の愛人がおり、相手が変わるごとに新たなインスピレーションを得ていた。

ゲルニカ(1937年ごろ)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

モノトーンでありながら激しい怒りと悲しみ、憤りを感じさせる。
縦約3.5m、横約7.8mもある、巨大な絵画。美術館最大のみどころ。誰もが一度は目にしたことがあるはずの有名作品。

ゲルニカとはバスク地方にある町の名前。1937年、ドイツ空軍によるゲルニカ空爆では2000人の村民が2時間で亡くなった。町の70%が焼失。

国からの依頼を受けて描かれ、1937年のパリ万博でスペインパビリオン内で展示された。火の玉みたいな巨大すぎる天才のエネルギーが注ぎ込まれ、力業の極みを1枚の絵に見ることができる。地獄絵図・阿鼻叫喚とキュビズムの表現方法がピタリとマッチ。

あえて血や涙が描かれていない。加害者が描かれておらず、馬の頭上のランプが爆弾を表している。

当時ピカソの恋人であったドラ・マールは、プロの写真家でもあった。彼女が『ゲルニカ』の制作過程を写した写真8点が『ゲルニカ』に向かって右後ろの壁に展示されている。
フランスで描かれた『ゲルニカ』は、その後も長年スペインに帰ることはなかった。各地で企画展を行って稼いだお金で、左派の亡命者を助けていたという。その後ニューヨークの近代美術館を経て、スペインの民主化後、ソフィア王妃芸術センターに落ち着いた。

『ゲルニカ』を見た感想
大きい。15~16畳くらいの大きさで、当然壁一面。
展示室の天井が低いので圧迫感がある。
大きいが故に、いままでパッと見ただけでスルーしてきた細部の描写に改めて気がつき、じっくり見ることができる。
1937年の絵で、モノクロ。白の部分は、…黄ばんできたところも目についた。
大きすぎる絵なので、人垣で肝心の絵が見えない、の心配はご無用。ただし団体客は途切れない。ガイドさんの解説をイヤホンで黙々と聞いて(つまり内容は聞こえない)しばらくの間絵の中央前に人がたまって動かない…はあるので、タイミングを見計らって動く。

 

青衣の女(1901年ごろ)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

マドリード滞在時に描かれた。ピカソ21歳の時の作品。

親友が自殺したショックにより、青色ばかりを用いるようになった「青の時代」の代表作。豪華な衣装を身にまとった女性の肖像。暗い色遣いの中で口紅の赤が毒々しく、異様さを感じさせる。
モデルは特におらず、ピカソの記憶の中にいるパリジェンヌを描いたもの。当時フランスに住んでいたピカソがマドリードを訪れた際の作品で、完成後はスペインで開かれた全国美術展に出品された。そこで賞を受賞したにもかかわらず、ピカソはそれを断りパリへ戻ってしまい、絵はその後10年以上も倉庫で眠っていたという。

 

静物(死んだ小鳥)(1912年ごろ)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

縦45cm、横65cmという小ぶりな絵画。ピカソが30代のときに描かれた。
友人だった画家ブラックとともに生み出した「キュビズム」の手法で描かれている。キュビズムとは、まず描く対象を頭の中で一度バラバラに崩し、その後、新しい形へ再構築して描くというスタイル。

画中の文字はさすがにわかる。しかし2羽の鳥が描かれていると聞かされたのですが、…いったいどこに…。ピカソは鳥好きだったので、鳥をモチーフにした作品がたくさんある。

 

ダリ 1904~1989

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

フィゲラス出身。代表的なシュルレアリストの一人。裕福な家庭に育つが、ダリが生まれる前に夭折した兄と同じ名前を付けられたことが、後の自己顕示的態度につながったという。(奇行は芸術の一部として意図的に行っていたという説もある。)

独特な世界観や絵画やオブジェ、映像で表現した芸術家。自ら「天才」と称するなど、奇抜な言動で知られる。

また、奥様のガラの存在を忘れてはいけない。ダリはエキセントリックなキャラクターの一方、女性関係が乱れていないのでも有名で、ガラ一人を後生大事にしていた。(ダリくらいになると、浮気なんかするとあっという間に世界中にひろまってしかう。)ガラはダリの創作力の源となり、無名であったダリの作品を世に売り出した。今日のダリの知名度はガラのおかげであるともいわれている。

 

偉大なる手淫者(1929年)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

ダリ自らの性的妄想を描いたといわれている。右上の女性はのちの妻ガラであり、地面に鼻を突き刺しているような横顔はダリ本人であるという。バッタにたかるアリがダリの顔にまで上ってきており、これはダリ自身の恐怖を表している。
ダリの作品には、必ずと言っていいほど「カダケスの海」が描かれている。カダケスはダリが生まれたフィゲラス近郊の漁村で、ダリはその海辺の景色を愛していた。そこにはこの絵の横顔にそっくりな形の岩がある。

 

窓辺の少女(1925年ごろ)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

妹アナ・マリアを描いた初期、20歳ごろの作品。
後の作品に見られるダリらしさはまだ表れていない。優しい光の色合いや、重ね塗りで質感を出した紙、鑑賞者も海を眺めている気分にさせる、浮き立つような窓のブルー。ハタチでこの絵の完成度。ダリの早熟の天才ぶりが伝わってくる。同じく妹を描いた「後ろ向きに座る女」もぜひ。

もともとは純朴でおとなしい性格だったダリにとって、妹だけは身近な「女性像」だった。

 

ミロ(1893-1983)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

バルセロナ出身。幼いころから絵や詩など芸術に関心が高かったという。両親はミロを勤め人にしようとしたが、仕事が肌に合わなかった18歳のミロは病に倒れてしまう、その療養のため滞在していたモンロッチ村の環境に感銘を受け、画家になる決意をした。パリ留学時代にキュビズムやフォービズムに影響を受け、ミロの特徴でもある、対象を極限まで単純化した描き方を生み出した。まるで落書きのような非常に自由で独特な描き方は、現代の芸術家の中でも異色である。アトリエのあるマヨルカ島のパルマで亡くなった。

 

カタツムリ・女・花・星(1934年ごろ)

絵画でありながら、デザインされた文字(各モチーフを表すフランス語)が描かれているのは、当時画期的なことであった。文字は横方向、モチーフは方向に流れている。モチーフが細長いのは当時のミロの特徴であり、自ら「ワイルドの時代」と称していた。

一筆一筆が長く、ゴッホを意識していたといわれている。

 

パイプをくわえた男(1925年ごろ)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

ミロの中でも人気の高い。子どもが描いた絵のようにも見えるが、煙をふかしている男性の口元の絶妙の描写。ミロにしか描けない。

 

椰子の木のある家(1918年)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

普通の絵だ…。でも空間の使い方、楽しく開放感がありますね。

 

そのほかの主な作品

ブルーと4本のレッドストライプ(1966年)

60万ユーロ超えで購入された作品。

アントニ・タピエス(1923-2012)
バルセロナ出身。シュルレアリズムの影響を受けたのち、より抽象的な作風に移行、筆先の線やシミもモチーフと捉えた「アンフォルメル」を実践。ブルーはカタルーニャ州旗の象徴、4本のレッドストライプはカタルーニャの旗の赤。私もスペインに行って初めて知ったのですが、スペインとカタルーニャにはイギリスとアイルランドみたいに、民族問題がある。カタルーニャ人タピエスの、激しい闘志、秘めたる悲しみが込められている。黒十字はタピエスのT。おなじくソフィア王妃芸術センター所蔵の「灰色のマチエールの重ね合わせ」も有名。

 

ジョゼットの肖像(1916年)

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

フアン・グリス

キュビズムではあるが、フアン・グリスはイラストレーターから転身した画家。比較的何が描かれているのか分かりやすく、カラフルで親しみやすい。

 

 

ミュージアムショップ

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

 

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

 

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

館内に2ヶ所あり、1つは書籍を扱う新刊の「ラ・セントラル」。

もう1つかサバティーニ館にある「パラシオス・イ・ムセオス」。


営業時間10~20時45分(日曜は~18時45分) 休:火曜

 

 

感想

Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

モノを知らない私は、「現代芸術と子どもの落書きとどう違うのだろう」とか思ってました。
いやあ、全然違いますね。行って初めて実感した。

ピカソにしてもダリにしても、描かれている世界がそんじょそこらの凡人とはケタ違い。日頃、図録や画像で「変わった絵だなあ」とか思いながら見てる。
そして実物を、額縁入りのキャンバスに描かれた絵を目の前にして、まず感動してしまうのは、ピカソもダリも、ものすごい技巧派です。

キュービズムもシュールレアリズムも、殴り書きどころか、ものすごく精緻に描かれている。考え抜かれている。十分に時間をかけている。とってもカラフル。でも、たった今描き上がったばかりみたいに、絵にツヤとテリがある。
もともと絵が上手い。上手すぎる。何でも描ける。

身の回りの風景や花瓶や壺や歴史の一場面だって、描く気になればいくらでも描ける。

天才画家って、若書きのころから、段違いに上手い。

平知盛じゃありませんが「見るべきものは見つ」心境になってしまい、一般人が「うまくなりたい」なんて底辺で一生うじうじしているのは眼中になく、別のステージにさっさといっちゃう。

心の中の引出しが無尽蔵。汲めども尽きぬイマジネーションを持っていて、自分の超絶技巧で再現できる。見るものの心を動かす。感情に訴える。納得させ、感動させることができる。

昔は、絵と言えば宗教画、歴史画。市民が力を付けて、新たな顧客向けの絵画が脚光を浴び、市場ができた。

一般大衆にも作品を見せる土壌ができた。時の権力者の庇護抜きに食べて行ける、名を上げることができるようになる。

の時代の流れと、巨匠の才能の巨大さが上手にマッチして、 新たな表現が生まれたのでしょう。

 

画像や写真は、どうしてものっぺりしてきます。

ピカソの「静物(死んだ小鳥)」なんか、実物は、3Dアートなのではないか。と絵を斜めから見てしまう。

浮き上がっている。立体感がある。絵筆で、描けちゃうんですねえ。いとも簡単に。

そして美術館に展示している絵を順番に見ていって、明らかに他の絵と違っていて、「コレは何だ」感がある。

ピカソは偉い画家だからとソフィア妃芸術センターまで足を運んだ私。

でもピカソって、すごいから偉い画家になれたんだ、を肌で実感できました。

実物のダリは、色がキレイ。
描かれているものの過激さよりも、ビビットな色を大胆に使い、彩度が高いことにまず驚かされ、見とれておりました。