中国人物伝 第I巻 乱世から大帝国へ 春秋戦国―秦・漢
中国人物伝 第II巻 反逆と反骨の精神 三国時代―南北朝
中国人物伝 第III巻 大王朝の興亡 隋・唐―宋・元
中国人物伝 第IV巻 変革と激動の時代 明・清・近現代
長い本、大河小説、何冊もある続きものの本は読むのに手間暇かかる。(大人は忙しいんだから♪)もはや通史など読み通す気力も時間もない~。と諦めかけていました。が、この本の発刊を聞きつけ、井波律子先生とくれば、読める!と勢い込んで一挙購入。
井波律子先生。京都大学でかの吉川幸次郎先生(中国文学の先生の中の神の中の神)に師事した中国文学の正統派。永く金沢で教鞭をとられ、出す本出す本すべて外れなく、「三国志演義」の完訳者、と聞けば素人ながら力量は伺うことができます。毎日新聞の書評欄でもその名を連ね、評する本のジャンルは多岐にわたることおびただしく。井波先生の文章、好きなんです。丸谷才一先生亡きあと、今の所、私の中では、ナンバーワン。 恋心は尽きることなく、新刊が出ればせっせと買って、いつかは読むぞと積んである。
奇人と異才の中国史(昔読んだ本だから20冊の計算外)
を読み、脳天ガツンと殴られた感じで、こんな面白い本書く人いたんだわ~とあっさり井波教に転んだのは、そうか、もう10年以上前のことなのか~。この本をはじめとした、各方面に寄稿した中国の歴史上の人物を年代順にならべ、加筆親筆加えたのが中国人物伝。全4冊。歴史の本というよりは、人物史なので、単発で読んでも十分おもしろい。そしていままであっちの本、こっちの本、とばらばらだったのを時代順に並べなおしたことで、取り上げられた歴史上の人物の生涯を追っていけば、いつしか3,000年の歴史の旅へ。現在に突き進む怒涛のようにな中国の時代のうねりを、ありありと実感することができるのです。
第I巻
中国はあけそめし遥か古代の頃、昔習った荊軻(秦の始皇帝を暗殺しようとして殺された刺客)西施(古代中国の伝説上の美女)、孔子(言わずと知れた「論語」を書いた大先生とか)
第II巻
群雄割拠の大混乱の時代の三国志の英雄たち、戦乱の世故にあでやかに咲き誇る文化の香り。
第III巻
花開く牡丹のごとき大唐帝国。おなじみの玄宗皇帝と楊貴妃とか、李白杜甫はこの時代ですね。熟しきった果物が落ちるがごとく唐は滅び、またきた大混乱を経て勢いずく宋。そして砂漠のかなたから砂煙毛立てて疾走してきたチンギス・ハン。
第IV巻
明も清も洗練の度はますます研ぎ澄まされていき、「爛熟」がまさにピッタリ。そして欧米列強&日本の魔の手が伸び、今の中国建国。どこまでも変りようが、極端なんだからぁ~もぅ~ってかんじです。毛沢東とか魯迅とか。
論語入門
中国3,000年の歴史を読ませる本を書くほどの先生ですから、当然「論語」の本も書くのです。時代ごとに、名を知られた漢学者、評価と名声を確立なさった先生は、必ず初心者向けの論語の本をお書きになられます。
井波先生の師、吉川幸次郎先生は、唐の大詩人、杜甫を評し「どうしてああも、フレッシュなんだろう」とため息交じりにおっしゃられたそうです。
僭越すぎますが、この本読んで、孔子って熱い人だったんだなあ~と。松岡修造ばりに熱いのですよ。
孔子の人となりと考えの底に流れるもの。「論語」の各章の読み所と定番の弟子とのやり取り。人間孔子の素顔に迫るエピソードのかずかず…。
論語、読まなきゃならん。生の「論語」買って読み通せるならそれば一番なのでしょうけど。とりあえず、入門書を。やさしい解説本を。
の方も、「論語」読まなくてもいい、何が書いてあるかくらい知りたい。の方に、おすすめ。