松田聖子の私的ベストおすすめ30曲。シングル・アルバム収録曲をとりまぜて。
1 赤いスイートピー(1982)
誰もが認める不動のNo.1。名曲の誉れ高い。松任谷由実が大女優、グレタ・ガルボをもじった「呉田軽穂」の名前で曲を寄せた(作曲)。聞かせどころは曲中盤、
I will follow you
とラスト、赤いスイートピーと最後の一段高音にあがるリフレイン部分。歌の内容は早春の日、若いカップルが電車で海を見に行く。女の子はおくての、シャイな好きな男の子にそっと寄り添い、あなたが好き。あなたに付いていきたい。一緒に生きていきたい。と心の中で強く男の子に語りかけるのです。恋する女の子、可愛くて、女の子らしい、元気な女の子。芯の強さと一途さを併せ持つ。声の第一の全盛期が終わり、歌い方を変えた。スローなテンポのこの歌は珠玉の一曲となり、男の子が追っかけるアイドルから、女性にも一目置かれる存在に。シンボリックな究極のスタンダード。
2 ボーイの季節(1985)
ちょっとへそ曲がりかしら。しかし凄い。そして名曲ですよ。この曲。結婚・休業に入った時の歌。つまり引退ソング。普通、引退ソングって、「みなさん今までありがとう。幸せでした。さよならがわりに歌います」的な内容の歌になっちゃう。誰とはいいませんけど。聖子ちゃんは、違った。密やかに始まるイントロ。硬質なクリスタルが触れ合い、奏でるがごとくの強く通る美声が響き渡る。歌の内容は夏の終わり、彼の思い出の地に降り立った二人。立ち尽くす彼を見つめる彼女。どこまでも抒情的。聞かせどころは冒頭
革のカバン一つだけなの
の「だけ」でまず聞かせ序盤で低音→高音、低音→高音でまた聞かせ、サビは盛り上がりつつもスローなテンポで夏の幻想のイマジネーションがかきてたられます。これが、聖子ちゃんの引退ソング。凄すぎる。鳥肌立ちましたね。私は。
3 あなたに逢いたくて〜Missing You〜(1996)
基本、松田聖子の黄金期は1980年代。この歌は松田聖子の唯一のミリオンヒット作(セールスは公称110万枚)であり、最大のヒット曲。キャノンのプリンターのCMだったのです。
白血病でわずか27歳で惜しまれながら世を去った昭和の美人女優、夏目雅子(1957-1985)のアップが次々プリントアウトされて出てくる。死後10年を経て1枚、また1枚とTVに映し出され、若くして散った名花に改めて満ちてくる哀惜の情…。流れる歌がこの歌でした。松田聖子と夏目雅子は、私生活でも仲が良かった。TVで流れた歌声はサビの
あなたに逢いたくて~
の15秒だけ。聖子ちゃんはどこまで行っても聖子ちゃん。かわい子ぶりっ子、しかしこの歌の内容は大人の女性が過ぎ去った愛し合った日々を思い出し、愛した人に未だやまぬ果てない思いを歌い上げるスケールの大きなラブソング。作詞作曲、松田聖子。(正確にはSeiko Matsuda)後でも書きますが、事務所から独立後、自分で自分をプロデュースは難しい。はこの曲の前にあっては、脱帽。
4 青い珊瑚礁(1980)
デビュー2曲目。(デビュー曲は同じく1980年「裸足の季節」。)1曲目も良かったけどこの歌は衝撃的だった!3段階くらいハイトーンだ!オープニングがすべてでしょう。夏の入道雲を思わせるような、波の高まりを連想させるようなシンプルかつ短くも忘れられないイントロから、
あ~私の恋は~
といきなりの透き通って若さ弾ける突き抜ける甘やかな声!「聖子ちゃんカット」と呼ばれた前髪を下ろし、サイドに強めのパーマをあてて後ろに流した髪型は一世を風靡し、フリルやレースをふんだんに使ったガーリーな衣装、リズムを取りながら歌うとスカートがゆれる。はにかんだかのような今よりちょっとはれぼったい目の聖子ちゃん。男の子が「聖子ぉ~!!」と声を張り上げ。人気と知名度は一気にあがり、大スターの仲間入り!一挙手一投足が取りざたされ、やれ誰と仲が良い、だれそれと怪しい。追い掛け回されるようになる。可愛い子ぶりっ子略して「ブリっ子」、新人賞をもらって「おか~さ~ん」と泣き出したものの涙がこぼれてないぞ、と「うそ泣き聖子」と鋭いツッコミ!?入ったり。聖子ちゃんの伝説は、この歌から始まったのです。
5 Rock'n Rouge(1984)
カネボウの口紅のコマーシャルソング。アイドルとしての全盛期、脂が乗りに乗った頃の曲。作詞・松本隆、作曲・呉田軽穂実は松任谷由実。松田聖子がなぜ時代の寵児となったか的な文を読んでいくと必ず突き当たるのがユーミンと作詞家の松本隆。ゴールデンコンビですね。歌は歌詞に
花びら色
とあるようにふんわりと明るく、可愛く、楽しい。歌の内容はオレ、モテるんだぜっていきがってる男の子が女の子をドライブに誘う。女の子はそんなのもちろんお見通し。聖子ちゃんは、言われてませんが、コメディエンヌの要素、ありますね。お高くとまらず、男の子にあわせてくれる。テレビ出演の時の受け答えなんかでも伺えた。弾ける女の子の気持ちを楽しく歌い上げ、ふんわりと柔らかに華やかに仕上がった神曲。さらにコードの運びは音楽の教科書に乗せたいレベルであるとのこと。
6 SWEET MEMORIES(1983)
サントリーの缶ビールのCMソング。放映当時大評判だった。アニメーションで、酒場でペンギンの歌姫が甘いバラードを歌う。聞きほれるペンギンの目には涙があふれ、落ちた涙を追い、映されたテーブルにはサントリーの缶ビールが…。可愛いペンギンのキャラクターと歌の良さが注目を浴び、流れるサビは英語で、はじめ、歌い手の名前は明らかにされていなかった。松田聖子だ、と公表され、歌手としての実力を知らしめ、スタンダードとなった佳曲。CMのナレーションは所ジョージさんで、次々と続編が作られ、「私は缶ビールになりたい」(名作映画「旅情」のラストを思わせる駅の別れのシーンで主人公のペンギンはクチナシの花ならぬ缶ビールを手渡す)のコピーと語りが、胸にグッと来ましたね~。スローバラードは聖子ちゃんの鉄板で、聞かせどころのジャンル。時は流れ、歌うキーは往時の高音ではないけれど。でも伊達に歌手としてのキャリアを重ねてるわけじゃなし。補って余りある表現力で、これからも聴かせてください!とお願いしちゃう。
7 Canary(1983)
アルバム「Canary」収録。まんま少女漫画の世界。歌の内容としてはヒロインは港町から、愛した人から旅立っていく。一人で生きていく自信と翼をくれた貴方を決して忘れない、と心の中でつぶやきながら。この曲はシングルカットされビックヒットした曲、ではないんです。同名のアルバム(8枚目)の2曲目に収められ、ストーリー性のある歌詞(作詞・松本隆)、そして聖子ちゃんは初の作曲に挑み(作曲・SEIKO)愛くるしい表情やアクション、衣装、キャンディ・ボイスでありながら自立する女性の姿を歌い上げた。この歌も前半の低音・スローテンポに始まり後半の歌詞
ひとりで生きる
の「生きる」の高音が聞かせどころです。「SWEET MEMORIES」の歌姫のように、カナリアのように。ヒロインは強い意志を秘め、ずっと歌い続けているのでしょう。
【コラム①】:聖子の声は大きく分けて第一期・第二期・第三期。
今は歌姫という。ディーバと呼ばれる。松田聖子(1962-)は、アイドル。1980年代はこの呼び名だった。何ゆえに40年近く走り続けていられたのか。
まず声が良いのですよ。カッキーンと上がる高音。指ではじくと響く磁器のような。そして恋する女の子の心を歌い上げるにふさわしい、上ずり加減の甘酸っぱいヴォイス。
もっとも天性の高音と他を圧する声域・声量はアイドルとしての人気爆発、多忙を極めた初期の頃に失ってしまい(ここが第一の全盛期)(1981年の「夏の扉」くらいまで)(確かに初期のころは声を張り上げるような歌い方。喉を傷めるのも無理はない気が)、新たにキャンディ・ボイスと呼ばれる甘さと柔らかさと強さを併せ持つ低音と、ここぞ、の見せ場で高音を駆使する第二の全盛期へと。
結婚していったん家庭に入って喉を休め、復帰し、声としては第三の全盛期に入りますが、この頃、独立する。事務所の指示に従って動くのではなく、自分でやりたい。大成したアーチストの気持ちとしては誠にごもっともなのですが、どうしても、プロデュース力が、落ちる。
今は、あの高音は、もう出ない。たまさか紅白なんかでお見かけし、歌声を聞いていると取りようにとっては痛ましく、過ぎ去った年月が改めて思い起こされるのです。
しかし大御所として、コンサートにディナーショーに。別格であり続けている。
8 天使のウィンク(1985)
この曲も円熟期の1曲。作詞作曲が天才、尾崎亜美ですもの。(なお、マイNo.2「ボーイの季節」も作詞作曲尾崎亜美)某友人は松田聖子嫌いでしてね。「なんて内容のない歌」とこき下ろしていたぞ。(確かに歌の中身はストーリー性に乏しいと取れなくもない。尾崎亜美だもん。)力強いストリングスが曲の随所に響き渡り、天使が飛び交う夢の空間、少女は天使を追い、天使は「元気を出して」「勇気を出して」と少女に語りかける。トップ歌手として君臨した時期。にふさわしいスケールと幻想性のある歌で。You Tubeなどで見ることのできるテレビ出演でこの歌を歌う聖子ちゃんの美しさには、絶頂期の凄みがありますね~。フェイスラインがより一層研ぎ澄まされた。メイクは当時トップのメイクアップアーチスト、嶋田ちあきさんの手によるもの。(もっとも、前から聖子ちゃんはメイク上手、ブロー上手としてもスタッフの間では有名だったそうな)聞かせどころは冒頭
飛び立てる羽
部分の高音、ラストを締めくくる1番
約束だから~
2番
とても綺麗さ~
の高音の伸び。
9 夏の扉(1981)
夏は聖子の「夏の扉」か明菜の「サザン・ウィンド」か、論争!?したな~。聖子ちゃんは正統派の女の子。クラスで一番の美人、じゃないけど可愛い子。人気のかっこいい男の子をさーっとさらっていく女子力のある女の子。可愛くてパワフル。の立ち位置がこの曲にはよく出ている。作詞・三浦徳子、作曲・財津和夫。財津和夫は1970~80年代のJ-POPを引っ張った(当時は「ニューミュージック」と呼ばれていた)作詞家・作曲家であり伝説のグループ「チューリップ」のリーダーでもある。軽やかなメロディラインが特徴です。この曲は夏にふさわしくスピード感・躍動感のある歌。そして松田聖子は1981年で終わった。との意見を持つ方にとっては(ハードスケジュールで声が出なくなってしまった)松田聖子本来の歌声が聴ける最後のシングル曲となってしまった。(次のシングル「白いパラソル」と比べると一目瞭然ならぬ一耳瞭然。)シンボリックな松田聖子初期の1曲。聞かせどころは当然、サビの
フレッシュ、フレッシュ、フレーッシュ!
10 ガラスの林檎(1983)
結婚・休業までの間で、シングル最大の売上枚数を記録したのがこの曲。B面がマイNo,6「SWEET MEMORIES」でこちらがCMで人気に火がつき、両A面とされたのもむべなるかな。作詞は松本隆、作曲ははっぴいえんど、イエロー・マジック・オーケストラに参加し、今なおマルチな才能を発揮し続けている細野晴臣。この年の紅白の出場曲であり、ステージの最上部、クレセントムーンをかたどったゴンドラに乗リ、白のフェザーをあしらったクリノリンスタイルのドレス、白の髪飾り、シルバーカラーのロングタイプのイアリング。歌いながらゴンドラはステージに降りて、聖子ちゃんはゴンドラから降りてなおも歌う。忘れられません~。この歌も重厚な伴奏が印象的。月夜の晩、抱き合う恋する二人。腕の中、女の子のモノローグ。の歌。この歌はバラードでもありますが、トーンが、高い!歌詞中「東から」「コスモスが」「ガラスの林檎たち」と利かせどころの高音が数多く詰め込まれている。「宗教歌のごとき荘厳な響き」と評した人もいた。
11 裸足の季節(1980)
ここあたりで聖子ちゃんのデビュー曲にしてみましょう。カバー写真は初々しく、素朴なかわいらしさ。ひたすらアイドル路線をひた走っていたし、最初は男の子のファンが多かった。なのでなのかそうでないのまでは不明ながら、聖子ちゃんのある時期までのフォトは、目がはれぼったく、視線がいまひとつとろんとしており定まらない。やや唇を開き、首をかしげた陶酔めいた表情、そして言動が媚と見れないこともなく、私のような!?リアルワールドの当時の女の子には、敬遠されてしまう一面も確かにあった。デビュー当時の聖子ちゃんって、リアルタイムでは実は、印象さほどでもなかった。あんまり記憶に残っていない…。聴きなおし、伝説の始まりを感じなければなりません。聖子ちゃんの歌の最大の魅力、高音の聞かせどころもこの歌ではまだ、萌芽がありやなしやも見てとれす。かわりに歌いぶりはどこまでも初々しい。
12 Eighteen(1980)
この歌も初期の初々しい美声(声量豊か!今見れば私にでも大器の片鱗アリアリ!)が聞ける。かわりに後年の高音へのストレートなメロディーはないんですけど…。オールディーズなメロディで(作曲・平尾昌晃)でこちらも聖子ちゃんの歌としては珍しい。路線が固まる前だったんですね。動画を探しに飛ぶと、振りなんかも大きくて、男の子の「聖子ぉ~!」の掛け声も当時の時代を感じる。18歳でデビューした聖子ちゃん。当時としては遅いスタートだった。若年層(中~高校生)のファンをつかむために「18才」を強調し、世に出した曲とのこと。
13 制服(1982)
聖子ちゃんの卒業ソング!殿堂入りのNo.1「赤いスイトピー」のB面曲。作詞・松本隆、作曲・呉田軽穂こと松任谷由実。でもこの曲も、知名度は高い。アップテンポで、たたみかけるような繰り返しのメロディー。曲調は明るいけど、別れの曲です。歌の内容は高校の卒業式、天気は雨。女の子は好きで、でもそうは言えなかった男の子と自然に(←ここがあえて入っている。のが作詞家松本隆の才能だとのこと)肩を並べて歩いていた。男の子は東京に行ってしまう。告白したいけど。できなくて。男の子は女の子に東京の住所を書いたメモを渡す。でも、ただのクラスメイトでいい。と雨に塗れたメモを握り締めて別れが悲しくて、泣いてしまった…。1番の
クラスメイトだから~
2番の
クラスメイトだけで~
と聞かせどころ、この歌ではしっかり、はっきり。ほめ言葉しか聞こえてこない。詞よし、曲よし、歌よし。全て良し。
14 白いパラソル(1981)
聖子ちゃんの歌が変わる。天性のハイトーンから磨き上げたキャンディ・ボイスへと。の過渡期を切って落としたのがこの曲。とはいえ、喉の状態には波があったと見え、初期の特徴、ボリュームたっぷりの声量で歌い上げているバージョンもYou Tubeに残されていたりします。作詞家松本隆との初の組み合わせ曲としても特筆しておかなくては。(作曲・財津和夫)ミディアムテンポの曲で、素直にのびやかに愛らしくほほえましく、夏の恋を歌い上げている。ちょっとレトロ感。スローパートの変化を利かせたメロディーの運びが心地よく、山場の、
あなたを知りたい
ハイトーンがまだまだ伸びる、伸びていく。気持ち良く聞ける。「L・O・V・E、ラブリー、セイコ!」^^素直に歌い上げる曲、何気なシーンを描いた曲って、代表曲とかベストナントカには選ばれにくい。でも愛され続ける。そんな曲。
【コラム②】:田中絹代を超えた?華麗な恋愛・結婚歴。
結婚歴は3回。俳優の神田正輝(1950-、結婚は1985~1997年)さん、歯科医の波多野浩之さん(6才年下とのこと。1968?-、結婚は1998~2000年)、慶応義塾大学医学部准教授河奈裕正さん(1962-、結婚は2012年~)。
結婚前の歌手の郷ひろみ(1955-)さんとの熱愛報道で、みんな二人はゴールインするものだとばかり思ってたのに、一転破局、すかさず神田正輝との結婚宣言、で度肝を抜かれ、入れ替わり立ちかわり途切れない男性の噂。
とある芸能レポーターはため息交じりに「田中絹代以来だ…」と漏らし、ここでも大物ぶりを発揮。そして貫きとおすことで、その生き方までもが。ある種、憧れになってしまうという稀有な存在なのです。
1980年代、トップアイドルの座を争った中森明菜(1965-)は歌手の近藤真彦(1964-)さんとの恋に破れ、自殺未遂騒ぎを起こし、以後立ち直ろうにも立ち直れない。リング角に追い詰められた瀕死のボクサーのよに、立ち上がっては倒れ、立ち上がっては倒れる。メンタルをやられて歌えなくなり、歌わなくなった。
今も精力的に活動を続け、話題を振りまく松田聖子とのコントラストがわかりやすすぎる。聖子ちゃんは強い。タフだ。
15 渚のバルコニー(1982)
「白いパラソル」から1年。の同じく夏の海辺を歌った歌。聞かせどころの高音はいきなり始まり、中盤にもサビにも満載です。出だしとラスト
ILoveYou So Love You So…
のささやくかのごとくの高音が好き。今までの歌い方からキャンディ・ボイスへの移り変わりが(あえて進化とは言いません)はっきりわかります。聖子沖縄殴打事件なんてのもありましたね。(1983年3月28日)この曲を歌っている時です。ファンの男の子が「自分も有名になりたかった」とステージの聖子ちゃんに殴り掛かった。幸い大事には至りませんでしたが…。今でこそ老若男女一目置かれている聖子ちゃんですが、このころは女の子や女性には敬遠されがち。そりゃ、可愛いですよ。しかし見るからに可愛すぎ、上目遣いや舌足らずのしゃべり方、オーバーアクション気味のリアクション、…同性の目から見ればどうも、わだかまる。掴みどころがない。美声をもう少し全面に押し出した売り出し方、なかったのかなあ…。
16 風は秋色(1980)
初期の溌剌かつ突出した声量を堪能できるという意味であればこの歌か「チェリーブラッサム」(1981)。私はどっちかというと、後期のクリスタルみたいな歌声の方が耳に馴染む。そして「風は秋色」の時は18才だし、もうちょっと大人な歌が好みなんで、この順位にしてしまいますけど。1980年代は、数多くのアイドルが花開いた時代でした。松田聖子は、そうとは見せかけず必ず真ん中に立つ。(と別の元アイドルが語っている)そして後の生き方からもわかる。気が強い。芯が強い。「女子力(当時はこの言葉はなかった)で売る」と決め、不屈のメンタル。デビュー当初、所属事務所の売出順位は決して高くはなかった。しかしトップの座をつかみとる。スタミナと芯の強さは今日に至るまで一貫して続いている。歴史に名を残すゆえんですね。
17 天国のキッス(1983)
キャンディ・スタイル極まれりって感じの歌。歌の内容も可愛いし(夏の海、カップルが海辺で戯れる。キスされて気が遠くなって、ココは南の島?それとも海の底?私をもっとずっと遠くまで、連れて行ってほしい)歌っているときの無邪気なあどけない愛くるしさは、いやはや、究極のぶりっ子で、女の子に「ちょっとあの子は、裏があるんじゃない?」と勘ぐられてしまうのも。仕方ないですね♪でも聖子ちゃんは嫌いと言い切る人は多い割には!?聖子ちゃんカットは日本全国津々浦々にあふれたのです。この不思議。この神秘。作詞・松本隆、作曲編曲・細野晴臣。松本隆センセイいわく「松田聖子プロジェクトの最高傑作。」主演映画「プルメリアの伝説」(1983)(ハワイを舞台にした若い2人の悲恋物語。共演は中井貴一)の主題歌でもあります。聞かせどころは冒頭のハイトーンヴォイスとラストの転調、サビを作らないエンディング。(結局全部だったりして;;)
18 秘密の花園(1983)
ゆるりとしたミディアムテンポの曲。歌の内容は月夜の晩、女の子は男の子に呼び出されて岬へと。私のことを口説きたいなら、三日月の月の光のように私を包んで…。とタイトルに男性陣は意味深だと大騒ぎし、でも私はまず、清く正しいヴィクトリア期とかエドワーディアンを彷彿とさせるバーネットの小説と同じタイトルだぁ、と思ったんですが、とぶりっ子しちゃっていいですか?作詞・松本隆、作曲・呉田軽穂こと松任谷由実(財津和夫が下りた)聖子ちゃんはラジオのパーソナリティなどしていたこともあります。歌では作り込まれた世界を表現していましたが、トークは歌のイメージとはまた違ったあっけらかんとしたトークが楽しかった。歌中「あなたってどういうつもり?」の歌いまわし、DJトークと同じだった。当時は歌手のテレビ出演はバラエティ番組やコント番組に出て、パフォーマンスをこなしてから「それでは1曲」の流れも結構あった。聖子ちゃんも、けっこう突っ込まれて、楽しい掛け合い、見せてくれてました。
( ↓ コチラで聞けます )
19 時間の国のアリス(1984)
ミディアムテンポの曲、かつ曲調がスピーディ(中ほどにちょこちょことたゆたうかのようにアクセント替わりの低音のスローパートがあり、溜めた続きが繰り出されるさまが緩急自在)でかつほどほどのハイトーンなので、余裕の歌いっぷりでその分声が伸びている~。「不思議の国のアリス」は、10才なのですが。歌詞も
タキシード着たウサギ
だの
童話の世界
だの女性というよりは幼い女の子っぽいワールド。でも恋しているのね。
キスはおでこ
とのフレーズが。ガーリッシュな歌の内容に合わせ、髪はロング、リボンとかつけて、大きめのイアリングつけて歌ってた。募る思いやドラマティックな設定の歌ではないので、ほほえましく素直に楽しめる1曲です。作詞・松本隆、 作曲・呉田軽穂こと松任谷由実。
20 瞳はダイアモンド(1983)
名曲ですものね。作曲者である松任谷由実、徳永英明、平井堅などカバーも数多い。天性のハイトーンが全編通して貫かれ、愛する人を失った悲しさ。歌の内容はブルーグレイの雨の夜。雨粒とこぼれおちる涙をダイアモンドになぞらえ、瞳もまたダイヤモンドの輝き。トリプルダイアモンド。寄せては返す感情の高まりはクライマックスへと。とシチュエーションが抜群であり、詩的である。ドラマティックさではダントツではないかと。全盛期を彩る誰もが認める落とせない1曲。1年後に当時のアイドルの双璧、中森明菜は「飾りじゃないのよ涙は」を歌い、聖子の涙、明菜の涙。20世紀を代表した歌姫2人のキャラクターととらえ方の対比はどこまでも鮮やか。同じ時代で、両方の歌を聴ける幸せをかみしめたくなったりして。作詞・松本隆、 作曲・呉田軽穂こと松任谷由実。
21 LET'S BOYHUNT (1983)
この曲は普通、聖子ちゃんの歌のランキングとかで見たことナイ。(アルバム「Canary」収録曲)しかし素の聖子ちゃんキャラクターが顔をのぞかせる楽しい歌で、ちょっとユーモラスで、大好きなんですよ。歌を聞いてボーイハントのやり方を教えていただける!?女の子にとっては大変にありがたい!?曲なのです。舞台はゲレンデ。転んだ時助け起こしてくれた男の子にニッコリ微笑む。こちらから誘っちゃダメ。名前は教えても部屋番号はナイショ。誘われても焦らし、腕を組むのはまだ先。余裕見せて冷たくして。内心ドキドキ…。長く続く恋ならいいけど。明日はもっとやさしくしてあげる。聖子嫌いの某友人はこの「してあげる」に怒り心頭で。「気にくわない!」と大騒ぎしていた~。実物の聖子ちゃんは実は竹を割ったようなスカッとした性格なんだそうな。そしてきっと、好きな人には甘え上手で、そして稼いでくる。男性にとってはまさに観音様では。作詞・松本隆、作曲・林哲司。
【コラム③】:地に足付いてる底堅さ。
最初の結婚相手、神田正輝さんは、「聖子さんのどこに惹かれました?」と聞かれ「彼女、感覚がノーマルなんですよ。」(ノーマルな人が3回結婚するのか、の突っ込みはこの際なしで)金銭感覚なんかも、大スターなのに、いたって堅実だったとか。
一回目か二回目か、どっちの離婚会見か忘れてしまったのですが「私は仕事人ですから」と答えていたのを覚えています。
郷ひろみか神田正輝か!?で大げさに言えば日本国内大騒ぎだったころ!?新作発表の記者会見なのに、あらかじめ「作品について聞いてください。」とお願いしているのに、席上、プライベートを根堀り葉ほり聞かれる。冷静に見れば失礼極まりなくもない。それでも逃げず、聞かれたことに答えたのは「(答えないのは)大人げないから」とラジオで話していた。
最近だと、お嬢さんの神田沙也加さんとの不仲が伝えられ、大きなコンサートが控えているから話題に昇るのは悪いことではない。と一切沈黙。
押す・引くきっちりわきまえている。プロダクションを出た、作った、まだ出た…の類のスキャンダルはあるけれど、こと仕事に関してはスキャンダルは皆無。
「松田聖子」を作り上げてきた。この有能さ。を生理的に受け付けない人は松田聖子の歌に聴く耳は持たない。しかし歌は歌。私は、聞かせていただきます。好きです。
22 ハートをRock(1983)
歌を聞いて山下達郎が絶賛したと言われている。ハイトーンかつアップテンポでビートがきいており、同じメロディーが転調を繰り返し音階が上がっていく。歌の内容はカタブツの男の子に面喰らいながらもハートをRockされたい。ハートをRockしたい。男の子の心の扉を開かせんと優しく、可愛く、手綱はゆるめず(笑)別の世界に連れてくわ(注:こちらのフレーズも某聖子嫌いの友人の怒りの炎に油を注ぐ結果に;;)とささやく。本来の自分のテリトリーとは毛色の変わった曲であること。リズムの捉え方、盛り上げ方、聞かせ方。キャラクターを立ててストーリーに訴える表現力…。80年代前半、あまたの才能が吸い寄せられるかのように松田聖子の周りに陣取った。レジェンドの始まり。作詞・松本隆、作曲・甲斐祥弘(「甲斐バンド」の甲斐よしひろさん。ここにもまたビッグネームが1人)。
( ↓ コチラで聞けます )
23 硝子のプリズム(1984)
「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」
…。…意味が分からない。調べてみれば音読みで「せき・とう・おう・りょく・せい・らん・し」。赤、オレンジ・イエロー、グリーン、藍、パープル。そう。虹の色。失恋の歌だけど、軽快なメロディー。明日からあなたはあの子と一緒。傷ついているはずだけど。曲調はどこまでも明るく。ビブラートのかけ方。歌詞の意味に応じての歌い分け。音節の切り方。と表現力も申し分なく、声は濁りなく明るく澄んで。そして切なさと悲しみがほの見えてくる。三角関係をプリズムに見立て、七色・虹色にきらめく青春。ひとひねりしてあって、高度に洗練された失恋ソングであったため、注目を集めた。シングル「ピンクのモーツァルト」のB面曲の形でリリーズされたものの、今なおA面より「『硝子のプリズム』の方がいい」との声高く、評価高い。作詞・松本隆、作曲・細野晴臣。
24 真冬の恋人たち(1982)
アルバム「Candy」収録曲。聖子ちゃんには夏ソング(「白いパラソル」「渚のバルコニー」「天国のキッス」等々)なるジャンル分けがありますが、対する「冬ソング」の最強の一角を占めるに値する1曲。歌の内容は冬の湖にやってきた二人。彼は華麗な滑り。女の子は滑れない。一人で立っていると知らない人から声をかけられて、彼は慌てて飛んできて。二人は一緒。さっきナンパされてたじゃない。いいえ。私には心に決めた人がいるから…。見た目は愛らしく、守ってあげたい女の子。でも大好きなのはあなた。きっぱり言い切る健気さと一途さと底に確かにある強さ。感動してしまうのです。聖子ちゃんの顔は刻々変化していく。アイメイクを変える前の、素顔っぽい、あどけなさの残るころ。の可愛らしさは、まさに男の子の理想。最強・神・鉄板。作詞・松本隆、作曲・大村雅朗。男性のパートを歌うのは杉真理。
25 恋人はサンタクロース(1982、曲の初出は1980)
アルバム「金色のリボン」収録。作詞・作曲:松任谷由実。本家本元の歌(バブル時代の記念碑的青春映画「私をスキーに連れてって」の主題歌ならぬ挿入歌、今や主題歌「サーフ天国、スキー天国」よりこちら、サブの挿入歌の方がはるかに名高い)を松田聖子がカバーした。説明無用のクリスマスソング。歌の内容は小さい時、クリスマスにはサンタクロースが来るのよ、って隣のお姉さんが教えてくれた。お姉さんは、サンタクロースが連れて行ってしまって、今はいない。そして、今、私の家に背の高いサンタクロースがやって来る!見せ場のサビは恋する女の子の胸の高まりがそのまま!ま、もちろんユーミンが歌うのも良いんですが、ユーミンを経て、松田聖子を経て、以後毎年12月、不朽の名曲として日本中に流れ続けている。知ってました?この歌のあと、クリスマスは家族とではなく、恋人と過ごすもの、とイベントの意味が変わったんですって。
26 セイシェルの夕陽(1983)
アルバム「ユートピア」収録。セイシェルはインド洋に浮かぶアフリカ大陸の向かいに浮かぶ島。別名「インド洋の真珠」。世界に名だたる高級リゾート地で、イギリスはウィリアム王子とキャサリン妃の新婚旅行先と言われており、世界のビーチ100選に選ばれている。歌の内容はこの美しい浜辺に、女の子が一人、そぞろ歩く。バンガローで紅茶を飲みながら、世界で一番美しい夕焼けの中、愛しい人を思い、涙ぐむ。本領発揮、同じアルバムのマイNo17「天国のキッス」並みにキーは高く、ヒロインはより大人びて。1曲ごとにキャラクターを歌い分けているのが見事。設定がドラマティックでスケールが大きくかつセンチメンタルなバラードなので、ステージなどでも映える曲ですね。知名度も高い。作詞・松本隆、作曲・大村雅朗。
27 ピンクのモーツァルト(1984)
難解な曲だ。あ、もちろん、軽やかなメロディー、ふわふわのシフォンがひるがえるかのような、かつ要所要所を引き締める華麗なるアレンジ、響き渡るキャンディボイス、夏の終わりの大人の恋の歌。しかしなぜにピ・ン・ク(と歌っている)なの?なぜにモーツァルトなの?恋がゲーム?恨みっこなしとは?聞く側は戸惑い、この曲はいったい何なのだろう。わからないな~、違和感に包まれながらも曲は進み、終わってしまう。…化粧が変わってしまった。ショートカットは似合わない、とファン層が変わり、松田聖子は良くも悪しくも今日の一種別格の風格を身にまとう存在に変貌を遂げていった。作詞・松本 隆、作曲:細野晴臣。この時期あたりから松本隆は客観的に見ればスランプ。聖子×松本隆のコラボは1988年にいったん終了。再タッグは1999年(アルバム「永遠の少女」)。
28 マンハッタンでブレックファスト(1984)
アルバム「Windy Shadow」収録。冒頭の曲。シチュエーションが穏やかでない。目覚めたら見知らぬ男性が隣で寝ていて、昨夜の出来事は飲みすぎて記憶がない…。でも、こんな恋の始まりもありかもね。と日本の恋する一途な清純派の女の子からNYの摩天楼の破天荒なラブ・アフェアーへと世界は拡がる。でも、聖子ちゃんですから。伸びやかなキャンディ・ボイスは突き抜けていく。摩天楼に反射する陽の光のように。インモラルな恋愛は「アンナ・カレーニナ」だって「赤と黒」だって「椿姫」だって、人々に感動を与えているではありませんか!?作り上げた世界を堪能させていただければ、私はいい。それで十分です。作詞・松本隆、作曲・大村雅朗。
29 ハートのイアリング(1984)
ハートのイアリングは、他の人からもらったの、と嘘をついた。彼は去って行った。一緒にいてほしかったのに。作詞・松本隆、作曲・Holland Roseこと佐野元春。「「松田聖子プロジェクト」は1位でなければならない」と言い渡され!?提供した初の曲。「翳り」と「ブルース」を意識した。頂点に上りつめ、歌の振りも控えめ。伏目がちに淡々ととも取れる歌いぶり。いつもはフリフリヒラヒラのドレスを着て、笑顔いっぱい、天真爛漫な聖子ちゃんが一転、刈り上げのショートカット、ルーズ気味のシルエットのパンツスタイルでで失恋の歌を歌う。のが話題となりました。それでも「松田聖子プロジェクト」のミッションは見事達成され、この曲は派手さはなくてもキラリ光る。女の子の確かな心が歌い上げられ、エバーグリーンの1曲となり、松田聖子のディスコグラフィーに幅を厚みを加えた佳曲です。
30 雨のコニー・アイランド(1986)
アルバム「SUPREME」収録。コニーアイランドはニューヨークのブルックリンにあるニューヨーカー御用達の老舗のリゾート地。ビーチがあって遊園地がある。よくも悪くも老舗で、レトロ感満載。観覧車もジェットコースターも年季が入っており「(乗って)生きて帰れるのか」とぼやきたくなる代物。歌の内容は遊びだと約束した二人。最後のデートでコニーアイランドにやってきた。無情にも空から涙ならぬ雨が降る。恋の終わりを力強くも軽快に歌い上げる。バリバリのガールズソングから進化した世界がここに。作詞・松本隆、作曲・大沢誉志幸(ビックネームだ、こちらも…。)このアルバムは聖子ちゃんが妊娠・出産中に発売されたアルバムであり、ハードスケジュールから解放された時期とあって、喉が冴えており、歌声に艶がある。