藤沢といえば
- 江の島と鵠沼のある湘南
- 中居正広の出身地
- サザンオールスターズの根拠地(実は茅ヶ崎市で実は別なのだが馴染みのない人間にとっては似たようなもの)
- トレンドでいけば眞子さまの婚約者の小室圭さんが眞子さまと巡り合う前「海の王子」に選ばれたところ
イメージとしてはこのあたりでいいのでしょうか。
実は私の認識は「江の島」と「サザン」しかなかった。
ところが、思いがけず 藤沢のあちこちに出没するチャンスが巡ってきて、 すると藤沢と藤沢のいわれをもっと知りたくなる。
で、もともと浮世絵好きなので行く気になった藤澤浮世絵館。
藤沢市藤澤浮世絵館へのアクセス・開館時間・駐車場など
JR東海道線:JR辻堂駅北口より徒歩5分
辻堂駅を出て北口駅前のメインストリート沿いの真新しいビル、「ココテラス湘南」の7階。
(ココテラス湘南の立て看板)
(ビルの1階には道行く人から見えるよう、浮世絵のパネルが飾られていました)
- 入場料 無料
- 開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)
- 休館日:月曜日(祝日、振替休日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)、展示替え等のため臨時休館日あり
- 駐車場 なし。
ただし近くにテラスモール湘南・ユーコープ湘南辻堂駅前店がある。お買い物金額に応じて駐車料は無料になるので美術館に行く前か帰りにお土産などを購入する手はある。付近に有料駐車場もあり。
藤沢市藤澤浮世絵館の特徴
- 浮世絵専門の美術館。
- ビルの1階分のフロアが美術館の敷地。つまりコンパクトであり、疲れない。(大きい美術館って見て歩くだけで疲れちゃうじゃないですか~)
- 2016年に開館したばかりなのでキレイ。コンパクトな会場で浮世絵を最新の展示方法で見せていただける。初心者にもわかりやすく親しみやすく、楽しく藤沢と藤沢ゆかりの風物・人物と浮世絵についての知識を深めることができる。
ビルのエレベーターを降りると
藤沢と言えは「藤沢宿」ですよ!東海道五十三次の6番目!日本全国有数の宿場町なんですよ!まあ、見てってください。とっても有名なんです!とやる気見せる気バリバリの展示にまずびっくり。
江戸時代、江の島って歩いて渡っていたんですね。今は橋がかかってしまっていますが。
入場は無料ですが、入口に係員さんはいた。
「写真撮っていいですか」とお伺いを立てると
「フラッシュたかずに、他のお客さんに迷惑にならないなら、いいですよ」
とのお答え。ポイント高い!フランスみたい!
浮世絵とは
浮世絵とは、江戸時代に発達した版画絵のこと。現実の世相や風俗といった「浮世」を描いた絵画で、その名は17世紀中ごろには見られるようになる。
「浮世」とは本来は辛く苦しい世を意味する中世の「憂世」が、戦乱が終わり太平の世になって平和で楽しい世を意味するように書き改められたものと言われている。現代では「芸術品(アート)」として美術館などで「鑑賞」されている浮世絵も、作られていた当時は版本(木版で印刷された本)などとともに、様々な情報発信の手段としての「印刷物(メディア)」の一つであり、絵草子屋で気軽に買える「商品」。また有力な広告媒体でもあり、名所絵や美人絵にはさり気なく店名や商品名を入れたものもある。
美術館の由来。藤沢市には日本大学があり、元総長(呉文炳氏)からのコレクション寄贈をもとに、地域の文化に親しんでもらうために開館の運びとなったもの。
一文字ぼかし、改印、毛割、彫師・摺師・落款・版元印。浮世絵の基礎知識について説明があります。
藤沢と言えば有名なイケメン2人
小栗判官
「東海道五十三次之内 藤沢 小栗判官」歌川国貞(三代豊国)
江戸時代、小栗判官ってとってもメジャーなキャラクターでした。実在はしていない。
浄瑠璃や歌舞伎などで語り継がれ、マドンナ・ヒロイン・相方の照手姫とのすれ違いとハッピーエンド。悪い奴らにだまされて艱難辛苦の末の大団円…。藤沢を舞台とする名シーンが多く、小栗判官イコール藤沢、は江戸時代の常識。今も時々歌舞伎の演目に取り上げられている。バックに遊行寺と江の島の一ノ鳥居。
錦をまとったいい男!イケメンです。(注:原本展示はありません)
そして藤沢・江の島のいい男と言えば、忘れちゃいけない。
弁天小僧菊之助
「東海道一ト眼千両 藤沢 弁天小僧菊之助」豊原 国周 三代歌川広重
名口上、「知らざあ言って聞かせやしょう 以前を言やあ江ノ島で、年季勤めの稚児が淵 弁天小僧菊之助たぁ俺がことだぁ!」
…藤沢って江戸時代、美男ゆかりの地だったのね。中居正広どころじゃなかったりして。(注:原本展示はありません)
東海道五十三次コーナー
東海道五十三次といえば安藤広重の風景画なんて思い浮かびますが、展示は「東海道五十三対」。三代豊国、国芳、初代広重。風景は少なく人物を主とし、下3分の2が画面で、それぞれの宿にちなんだ伝説、史跡、著名な出来事等を描き、上3分の1に下の絵の説明がつくスタイル。名づけて「東海道五十三次で読み解く宿場の物語」。
展示替えもある様子で、私が行った時は日本橋から大津までの19枚。
好みでいくと
「東海道五十三対 石部」歌川 国芳
14歳の娘と38歳の男の心中物語「お半長右衛門」で有名なのが石部宿(今の滋賀県湖南市。)二人の名誉のために言えば、強盗殺人犯が2人を一緒に殺し、心中と見せかけて川に流したとの説もあるけど真偽は不明。浄瑠璃「桂川連理柵」の題材。13・4の女の子の情念と幼さが激しい。狂歌の下に描かれているのは旅道具。
藤沢宿コーナー
江戸時代の藤沢宿の特色の一つは多くの道が集まる場所であったこと。メインの東海道を西へ、四ツ谷から北東に分かれる大山道(大山阿夫利神社・大山不動尊へ)、南へ下る江の島道(江島神社・江の島弁財天へ)、遊行寺前で東に向かう鎌倉道、北へ向かう八王子道(滝山街道)、北西に向かう厚木道などがあり、観光・流通の中心地だった。
やっていたのは「歌麿作品にみる江戸の風俗」の展示で
などと、美人画を七福神になぞらえ、持ち物で恵比寿・寿老人・毘沙門天・福禄寿・弁財天・布袋を見分けるキーポイントの説明が。
「風流遊覧宝船之図」喜多川歌麿。
縁起の良い、おめでたい絵。
「江戸名物錦画耕作 店先」喜多川歌麿
絵草子屋さんの店先を描いている。
店先には錦絵が所狭しと陳列されており、江戸時代の浮世絵ショップの貴重な資料。並べられている絵は歌舞伎役者・美人・相撲の力士、柱絵(細長く、柱に貼れる)など。
「女織蚕手業草 十」喜多川歌麿
蚕の糸を紡いで絹織物にするまでを、実際はゴツイ男どもがやっていたのかいないのかはさておいて!?作業工程を美人画に仕立てた連作もの。繭から繰り出した糸の色や品質などに選り分ける作業の様子。
天保の改革のあおりで、歌麿がこの絵を描いた時期は遊女や歌舞伎役者や贅沢な風物を浮世絵の題材とすることは御法度。なので真面目に堅実に働く女性のシリーズなんですね。
「女織蚕手業草 十二」喜多川歌麿
同じシリーズ。最後は機織り。織機に座る髪を下した女性が、手足を使って絹を織る。右手に手にしているのは杼(ひ)。
あと5枚、歌麿以外の浮世絵もありました。
幕末になって横浜が開業すると、養蚕は藤沢市域を含む相模国(神奈川県)南部でも庶民の生業として盛んに行われ、大正~昭和初期頃の地図を見ると、一面桑畑のマークで埋め尽くされるような状態。藤沢市の北部では、特に横浜へ通じる道の起点となった長後の街が出荷の起点となり、長後街道は「神奈川のシルクロード」と呼ばれた時期もあった。
昭和2年の長後周辺の地図。桑畑の地図記号がこの地域全体に広がっていることがわかる。
江の島コーナー
富士山を別格とすれば、浮世絵に描かれた風景の中で、その数では江の島は、かなりの上位に入ると言えましょう。それほどに江戸時代の江の島詣では一大ブーム。
江の島は、湘南海岸と砂州でつながった島。波の浸食でできた「岩屋」の存在は、古くから宗教的な修行の場として多くの修行者の来訪を伝え、鎌倉時代に源頼朝の祈願により文覚が弁財天を勧請したという由来から、弁財天の島としても信仰を集め、また風光明媚な行楽の地としても人気を得るようになる。
浮世絵では、初期には富士山や朝日などとセットで中国の神仙思想にある蓬莱山に擬して描かれたものが多く、江の島詣でが盛んになるにつれ、参集する人々を描いたものが多くなる。
「江之嶋乃景」三代 歌川豊国(国貞)
人気役者が江の島詣の図。
「東海道七 五拾三次之内 藤沢(有田屋版)」歌川広重
「藤沢」を意味する(山の中の建物)遊行寺・(橋は江戸時代は)大鋸橋(現遊行寺橋)・(鳥居は)江の島一ノ鳥居。
浮世絵で春の江の島詣
期間限定、企画展示のコーナーです。
藤沢のランドマークである江の島は、江戸時代にも多くの人が訪れる人気の参詣・観光の地。江の島に集まる人々を描いた浮世絵や、貝細工などの江の島名物のお土産など。
…江の島名物って、貝細工だったの!?江の島、行ったけど、お土産屋さんの前くらい通ったけど、並んでいたのは海産物と名物生しらず丼をはじめとするお食事どころの看板しか思いだせないのだが…。知らなかった。
ちなみに2018~19年の展示の予定は
- 4月21日~6月10日 浮世絵で春の江の島詣で
- 6月19日~9月2日 空から見る相模と日本 鳥瞰図の系譜
- 9月8日~11月4日 やじきたが来た!見た!食べた?藤沢・東海道の名所と名物
- 11月10日~12月9日 松竹大谷図書館像「3D浮世絵 歌舞伎組上燈籠の世界」
- 12月18日~2月17日 広重の竪絵東海道勢ぞろい
- 2月23日~4月14日 小栗判官物語と遊行の縁
タイトル見ただけで楽しそう。
北斎が1枚、ありました。
題名不詳(貝屏風)葛飾北斎
右に藤の花、左に鶴と松の木に模した貝細工がほどこされている。貝の表面部分に繊細な空摺り(凸凹のみで形を表現する摺りの技法)などが施されていることから、一般の売り物ではなく、個人間で送られる摺物の一種と考えられる。
「風俗画報」第171号挿絵 山本松谷
明治31年(1898)年。明治の江の島。江の島に今も続く老舗旅館「岩本楼」からみた眺め。
私が行った時の江の島はもっと混んでいた。原宿並みだった…。
「嶌土産貝細工 雛屏風」 菊丸、いせ辰
紙でできていて、お土産に持って帰って折ると、小さな可愛い屏風になる。明治時代の江の島土産。
出口に向かいます。
併設された図書コーナーに可愛い、明治時代かな?の飛び出すカード、ポップアップカードが。
(おまけ)藤沢ゆかりの美人画
「風流四季の遊 弥生の江之島詣」喜多川歌麿
「藤沢宿 七」渓斎英泉
「東海道五十三次景色入女画 藤沢図」歌川国貞
(注:3点とも原本の展示はありません)
「藤沢」と名の付く美人画のテーマ、それはズバリ、「旅の女」。
感想
- 小さい。デパートの特設展示の美術展より小さいかもしれない。アートスペース以上、デパートの特設美術展以下の規模とみていただければ。所要時間、私は30分。サクっと行って帰ってこれる。「浮世絵~。なんだそれぇ~」のご主人を引っ張って行っても、すぐ見終わるから、気を使う必要なし!
- 説明パネルはほとんどふりがな付き。子ども向けの言葉を使ったイラスト入りのパネルなども数多い。
- ビデオ展示なんかもあって、座って見てると次々と江の島が描かれた浮世絵が出てきて、藤沢の歴史、江の島の歴史やいわれを5分くらいで説明してもらえる。わかった気分になれます。
- ワークショップやトークイベントなども盛んに行われている様子。
- 私の田舎、浮世絵なんかに描かれたこと、ないと思う。いいなあ。名所があるって。江戸から近く、史料が豊富で引き出しが沢山ある町、藤沢。
- 空いてました!学校の遠足・見学などにぶつからなければ混雑とは無縁と見た。
入場無料だし、展示替えになったら、またちょっと、行ってみてもいいかな。湘南テラスモールとセットで。